このページのまとめ
- メキシコにはほかの国にないような特有の福利厚生もある
- メキシコの福利厚生は「法定福利厚生」と「法定外福利厚生」に分けられる
- 法定福利厚生は、社会医療保険や退職年金、有給休暇などがある
- 法定外福利厚生は、フードクーポンや高額医療保険、社内預金などがある
- 企業の福利厚生を調べるときは、法定外福利厚生がどれだけ充実しているかに注目すると良い
メキシコ就労の予定がある方に向け、メキシコの福利厚生について解説します。コラムを読んで、メキシコにはどのような福利厚生があるのかチェックしてみましょう。
また、本コラムを提供するレバレジーズキャリアメキシコでは、日本語話者の方のメキシコでの就職をサポートしています。海外で働くにあたって、メキシコも視野に入れている方は、ぜひご相談ください。
メキシコの福利厚生
メキシコで現地の企業に就職すると、メキシコの制度に則った福利厚生を受けることになります。メキシコには、ほかの国にないような独特な福利厚生もあるので、メキシコで働く予定の人は事前に確認しておくことが重要です。
法定福利厚生と法定外福利厚生
メキシコの福利厚生には、「法定福利厚生」と「法定外福利厚生」があります。違いは、法律に定められているかどうかです。
それぞれ主な福利厚生は以下のようなものがあります。なお、以下の福利厚生は企業の従業員を対象とした制度なので、自営業や公務員は例外です。
【メキシコの主な法定福利厚生】
- 社会医療保険(IMSS)
- 退職年金(SAR)
- 労働者住宅基金(INFONAVIT)
- 労働者金融基金制度(INFONACOT)
- 労働者利益分配金制度(PTU)
- 年末クリスマスボーナス(Aguinaldo)
- 有給休暇(Dı́as de Vacaciones)
【メキシコの主な法定外福利厚生】
- フードクーポン・買い物券(Vales de Despensa)
- 高額医療保険(Seguro de Gastos Médicos Mayores)
- 生命保険(Seguro de vida)
- 社内預金(Fondo de Ahorro)
- 無遅刻ボーナス(Bono por puntualidad)
- インセンティブ(Productivity Bonus)
- ランチ補助(Servicio de Comedor)
- レストラン補助(Vales de restaurante)
- 通勤手当(Ayuda de Transporte)
- 慣習上の休日
法定外福利厚生は、企業が独自に決めているものです。企業の福利厚生を調べるときは、法定外福利厚生に注目してみましょう。
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メキシコの法定福利厚生
ここでは、メキシコの主な法定福利厚生について解説します。
社会医療保険(IMSS)
メキシコで働く役員以外の全従業員は、「IMSS」と呼ばれる社会医療保険への加入が義務付けられています。IMSS(Instituto Mexicano de Seguro Social)とは、社会保険庁のことで、IMSSが提供する健康保険そのものも「IMSS」と呼ばれています。
IMSSに加入していると、社会保険庁(IMSS)が運営する公共の病院については、無料で利用することができます。薬代も掛かりません。労災の役割もあり、労災や後遺症については給付金が支給されます。IMSSの保険料は大部分が会社負担なので、被雇用者の負担はわずかです。
医療費が無料になる点はメリットですが、IMSSが利用できる公共の病院は、貧困層も含む大勢の人で非常に混雑しています。また、治安も良いとは言えず、医療水準もあまり高くありません。そのため、ある程度の収入がある人は、私立の病院を利用するのが一般的となっています。IMSSの保険料を払っていても、使わないというのが実状です。
退職年金(SAR)
「SAR(Sistema de Ahorro para el Retiro)」は、65歳以上で受け取れる退職年金制度です。
SARの納付をするのは企業で、従業員の負担はありません。企業は、従業員の月収の2%に相当する額を、企業が選んだAFORE(年金基金運用機関)の個人アカウントに預金します。従業員は、65歳になったときに職に就いていなければ、退職年金を毎月受け取ることが可能です。
メキシコに定年制はないので、年金受給開始の時期は、受給者の選択によってそれぞれ異なります。また、SARは確定拠出型なので、給付額は年金の運用実績によって変わります。
なお、退職年金(SAR)を受け取るには、一定期間の納付が必要です。必要な期間は、750週(2021年時点。毎年25週増で2031年には1,000週になる)。期間が足りない場合は、積み立てた分を一括で引き出すことができます。
労働者住宅基金(INFONAVIT)
労働者住宅基金(INFONAVIT)は、企業が従業員の代わりに住宅購入資金を積み立てる制度です。労働者住宅供給基金公社「INFONAVIT(Instituto del Fond Nacional de la Vivienda para los Trabajadores)」が管理しています。
労働者住宅基金は100%企業負担で、従業員の負担はありません。企業は、従業員の月収の5%に相当する額を積み立て、INFONAVITが管理します。従業員は、住居の購入や改装、修繕をするときに、ローンを受けることが可能です。
労働者金融基金制度(INFONACOT)
労働者金融基金制度(INFONACOT)は、会社の従業員が低利融資を受けられる制度です。主に労働者の生活水準の向上を目的としており、家具や衣類、建築資材など必要な物品を購入する際に、融資を申し込むことができます。返済は給料から天引きされ、労働者が職を失った場合は、返済義務が繰り延べになります。
労働者消費基金庁「INFONACOT(Instituto del Fondo Nacional para el Consumo de los Trabajadores)」が管理しています。
労働者利益分配金制度(PTU)
労働者利益分配金制度「PTU(Participación de los Trabajadores en las Utilidades)」は、企業が出した利益の一部を従業員にも分配するというメキシコ特有の制度です。
企業は売上高の10%について、従業員の勤務日数や給料に基づいて分配しなければなりません。支払いは、年次決算提出後となる4月~6月ごろ。従業員は、役員以外かつ年間勤務日数が60日以上あれば受け取り対象となります。
年末クリスマスボーナス(Aguinaldo)
年末クリスマスボーナス(Aguinaldo)は、毎年12月20日前に支給される特別手当です。金額は、最低でも給料の15日分にあたる額を支給することと法律で決まっています。法定の福利厚生なので、企業は業績が悪くても支払わなければなりません。中途入社や退職者には、比例した分が支給されます。PTUやインセンティブが発生しづらい企業では、30日分が支給されることが多いです。
有給休暇(Dı́as de Vacaciones)
メキシコの有給休暇は、勤続1年で12日付与されます。その後、勤続5年まで毎年2日ずつ追加されていき、6年目以降は5年ごとに2日ずつ追加されていく仕組みです。1年目12日、2年目14日、3年目16日…というように増えていきます。季節労働者などについては、1年の勤務日数に応じた有給休暇が付与されます。
メキシコでは、有給休暇を取得すると、休暇手当も受け取ることができます。企業は、少なくとも賃金の25%を休暇手当として上乗せしなければなりません。
その他の法定福利厚生
メキシコには以下のような法定福利厚生もあります。
休暇手当 Prima Vacacional |
最低でも賃金の25%が上乗せ 割合は企業によって異なる |
休日出勤手当 Día de descanso semanal |
祝日や週の休日に出勤した場合、賃金の2倍が上乗せ(通常給与の3倍) 日曜日はさらに通常の賃金の25%が支給される |
残業手当 | 通常賃金の2倍が支払われる 時間外労働は1日3時間×週3日までと決められている (上記の時間を超える場合、3倍の賃金が支払われる) |
勤続手当 | 退職時、勤続年数×12日分の給与が支払われる (勤続年数15年以上の従業員が対象) |
不当解雇の補償 | 懲戒解雇の事由がない不当解雇の場合、 3か月分の給料と勤続手当、未払いの手当・賞与が支払われる |
研修プログラム
Capacitación |
企業は従業員に教育訓練を施さなければならない 訓練は就業時間内に行われる |
産休・育休 | 女性は産前・産後それぞれ6週間の有給休暇が取得できる 条件を満たせば産前の4週間を産後に振り替えできる (新生児の病気や障がいでケアが必要な場合、有給休暇を8週間まで伸ばすことが可能) 男性も子どもが生まれたとき、乳児を養子に迎えたときに5日の有給休暇が取れる |
授乳のための休憩時間 | 最大6カ月の育児期間中、1日30分×2回の授乳のための休憩時間が取れる |
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メキシコの法定外福利厚生
法定外福利厚生は、必ずしも付与しなければならないというものではありません。企業が従業員のために独自に設けている制度です。あくまで企業が決めるものなので、種類や内容は企業によって異なります。ここではメキシコの企業によく見られる法定外福利厚生について解説するので、企業選びの参考にしてください。
フードクーポン・買い物券(Vales de Despensa)
フードクーポン・買い物券(Vales de Despensa)は、食品が購入できる金券が支給される福利厚生です。クーポン券が毎月発行される形式と、専用のカードに毎月チャージされる形式があります。フードクーポンはスーパーやコンビニなどで使うことができ、食品以外にも日用品や家電などの購入にも利用可能です。ただ、お酒やタバコなどの嗜好品には使えません。
フードクーポンは税制上のメリットがあるため、導入している企業が多くあります。法定の福利厚生ではありませんが、日系企業では多く導入されています。
高額医療保険(Seguro de Gastos Médicos Mayores)
高額医療保険(Seguro de Gastos Médicos Mayores)は、手術や入院で医療費が高額になった場合にサポートが受けられる福利厚生です。ほとんどの日系企業に導入されています。私立病院で診療を受ける際にも適用され、キャッシュレスで利用できるので、公共の病院が利用しづらいメキシコでは便利な福利厚生といえるでしょう。家族に適用されるかどうかは企業によって異なるので、あらかじめ確認しておくことをおすすめします。
生命保険(Seguro de vida)
死亡保障のある保険です。民間の保険会社によって提供されます。
社内預金(Fondo de Ahorro)
社内預金(Fondo de Ahorro)は、従業員の代わりに企業がお金を貯蓄するという福利厚生です。給与口座とは別の口座に、給料の数%が貯蓄され、さらに企業がその同額を上乗せします。それに利息がついたものを年末にまとめて受け取れるという仕組みです。
メキシコの労働者はお金を貯める習慣がなく、もらった給料は使い切ってしまうという人が多くいます。そのため、給料天引きによって自然に貯蓄ができるよう、企業がサポートしているのです。積立貯金の制度は、規模の大きい企業でよく導入されています。
無遅刻ボーナス(Bono por puntualidad)
無遅刻ボーナス(Bono por puntualidad)は、無遅刻や無欠勤に対して支給されるボーナスです。遅刻を減らし、より安定的な生産をするために導入している企業があります。「月間500ペソ」など、企業によって決まりがあり、支給のルールはそれぞれ異なります。主にワーカークラスに支給されるのが一般的です。
インセンティブ(Productivity Bonus)
マネージャーや営業職などに対し、実績に応じて支給されます。「月次の◯%」「年次の◯%」といったかたちで、月次・年次で支給されることが多いです。
ランチ補助(Servicio de Comedor)
社内食堂で食べるランチ代の一部、もしくは全額を会社が負担してくれます。「一食当たり30ペソ」「昼食無料」といったかたちで提供されます。
レストラン補助(Vales de restaurante)
レストランで利用できるフードクーポンです。所定のレストランで利用できます。
通勤手当(Ayuda de Transporte)
あまり一般的ではありませんが、通勤手当を支給する企業もあります。ガソリンクーポンによる通勤費の補助をはじめ、車の貸与や通勤バスの手配などの方法で補助が受けられる場合もあります。
慣習上の休日
メキシコには、法定休日のほかに慣習上の休日というものもあります。11月2日の「死者の日」、12月12日の「聖母グアダルーペの日」などは、法定休日ではありませんが、企業によっては有給休暇になることもあります。
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