2025年5月29日
2025年5月29日
海外赴任をする人は、所得税で「居住者」か「非居住者」に分けられ、どちらに分類されるかによって確定申告の範囲が異なります。海外に長期間滞在しており、日本に住所や居所のない非居住者であっても、国内源泉所得が発生した場合は確定申告をしなくてはなりません。
このコラムでは、海外赴任者の確定申告について解説します。自分が居住者と非居住者どちらに当てはまるのかを理解し、税金の納税漏れのないようにしましょう。
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海外赴任者の確定申告の要否は、海外で働く期間によって異なります。海外赴任の期間によっては、日本にいなくても確定申告が必要になるケースがあるのです。
ここでは、海外赴任者の確定申告について解説します。
海外赴任者が確定申告をするかどうかは、海外赴任の期間で異なります。
日本の所得税法によると、日本に住所を持っている、または引き続き1年以上居所(いどころ)を持っている個人は、「居住者」の区分です。居所とは、本拠地とまではいえないものの、ある程度の期間続けて住んでいる場所を指します。1年以下の海外赴任の場合は、日本に住所を置いたままにするのが一般的なので、通常は居住者の区分になるでしょう。
居住者とされる人は、海外・日本の所得問わず、所得税を納めなくてはなりません。よって、確定申告も必要です。たとえば、半年間海外赴任をしていて日本にいない人でも、所得税法上では居住者に分類され、確定申告の対象になります。
居住者に分類されない個人は「非居住者」という区分です。たとえば、1年以上の海外赴任で、住民票を除票した人が当てはまるでしょう。非居住者の場合は、日本で発生した所得のみ、課税対象となります。そのため、国内で発生した所得(国内源泉所得)がない場合は、確定申告をする必要はありません。
居住者は国外所得も原則として課税対象となりますが、赴任国と日本が租税条約を結んでいる場合は、国外所得の所得税が減免される可能性があります。
租税条約とは、日本とは異なる税金に関する規定のある国との二重課税を防止するための条約です。国際基準の「OECDモデル租税条約」に沿った規定で作られています。
日本と租税条約を結んでいる国や地域は、2025年5月時点で156ヶ国あり、条約数は87条約です。
日本では国内の法律よりも租税条約が優先されるため、条約の内容によっては国外所得が課税されないこともあるでしょう。海外赴任が決まったら、財務省のWebサイトで赴任国と日本との租税条約の内容を確認してみましょう。
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参照元
国税庁「No.2875 居住者と非居住者の区分」
財務省「租税条約に関する資料」
「年の途中で1年以上の予定で海外赴任(出向)をする」「その年の年末調整の対象となる給料が2000万円以下」の2つの条件両方に当てはまる場合は、出国時に年末調整をする必要があります。
たとえば、4月31日に海外赴任で出国する場合は、1月1日から4月31日までに支払われた給料を年末調整で精算しなければなりません。5月1日からの給料に関しては、国内での所得がなければ年末調整は不要です。
保険料控除は日本に住んでいる間に支払われた金額が対象になります。また、扶養控除や配偶者(特別)控除は、出国時の状況によって判定されるので、経理担当者に確認しましょう。配偶者や扶養家族に収入がある場合は、その年の収入を仮で計算し、控除の可否を判断します。
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1年以上海外に居住する非居住者は、海外だけで収入を得た場合確定申告をする必要はありません。しかし、国内で所得を得た場合は確定申告が必要です。ここでは、特に海外赴任をする会社員に当てはまりやすいケースを紹介します。
なお、赴任国と日本とで結ばれている租税条約の内容によっては課税されないこともあるので、赴任前に確認しておきましょう。
国内で所有している不動産を貸し付けて利益を得た場合は、租税条約により多くの場合日本で課税対象となるため、確定申告が必要となります。たとえば、日本で住んでいた持ち家を、海外赴任中に賃貸住宅として貸し出した場合が当てはまるでしょう。
国内の資産を運用した結果、所得を得た場合も確定申告が必要です。具体的には、日本の国債、地方債、内国法人の発行した債券の利子や、外国法人が発行する債券の利子のうち恒久的施設を通じて行う事業に係るもの、国内の営業所に預けられた預貯金の利子などが該当します。
国内で持っていた資産を譲渡して所得を得た場合は、非居住者だとしても確定申告をしなければなりません。海外赴任をきっかけに、不動産業者に持ち家を売却したときなどが該当するでしょう。また、不動産の上に設定される権利、いわゆる地上権や借地権、地役権、永小作権などの譲渡により対価を得たときも同様です。
不動産だけでなく、株の譲渡でも確定申告が必要な場合があります。課税になる所得は以下のとおりです。
ゴルフ会員権の譲渡による所得は総合課税の対象となり、それ以外は申告分離課税になります。
日本に住んでいたときに加入した生命保険を解約し利益が生じた場合は、確定申告が必要となる場合があります。確定申告の対象となるのは、「保険料が一時払いの生命保険など(損害保険や共済を含む)のうち、 保険期間が5年以内のもの、または、保険期間が5年超でも保険期間の初日から5年以内に解約したものから生じた利益」に当てはまらない場合です。
上記の条件に当てはまる解約返戻金は、源泉徴収(源泉分離課税)の対象になります。
参照元
国税庁「No.2878 国内源泉所得の範囲(平成29年分以降)」
海外赴任者が日本で発生した所得の確定申告をするには、納税管理人を選任する必要があります。非居住者の場合は、海外からe-Taxを使っての確定申告はできないので注意しましょう。
非居住者に分類される海外赴任者が、日本で生じた所得の確定申告をする際は、「納税管理人」に書類の作成や提出、税金の納付などを代理で依頼する必要があります。
納税管理人は、日本に在住している人であれば誰にでもなることができ、資格なども要りません。通常は信頼できる親族もしくは専門家に依頼する場合が多いようです。
納税管理人を選任する際は、納税管理人届出書および納税義務者・納税管理人の本人確認書類を税務署に提出します。窓口での届け出が難しい場合は、郵送やパソコンでの電子申請(e-Tax)も可能です。
なお、納税管理人は出国前に選任する必要があります。入国までに申請が間に合わないと、納税が遅れる可能性があるので、余裕を持った対応が重要です。
「海外からe-Taxを使って確定申告をすれば良いのでは?」と考えている人もいるかもしれません。国内に住所を有している、または1年以上居所を有している居住者は、海外からの電子申告が可能です。しかし、非居住者はe-Taxを利用することはできません(2025年5月時点)。そのため、納税管理人を選任する必要があります。
ただし、2024年5月27日以降、住民票の除票をして日本に住所を有さなくなる人も、手続きをすればマイナンバーの継続利用が可能になりました。そのことから、非居住者であってもマイナンバーカードを用いる電子申告がいずれできるようになるのでは?と予想する人もいます。
最新情報をチェックし、正しい納税手続きを行いましょう。
参照元
国税庁「A1-7 所得税・消費税の納税管理人の選任届出又は解任届出手続」
海外赴任をする方は、確定申告のほかに住民税がどうなるのかも気になるのではないでしょうか。住民税は、日本に住んでいなくても住民票を残している場合は住民税を納めなくてはなりません。ここでは、海外赴任の期間ごとの住民税の取り扱いを紹介します。しっかり理解したうえで出国準備を進めましょう。
海外赴任の期間が1年未満の場合は、国外転出届を出す必要はありません。そのため、住民票を抜かずに住所をそのままにする人がほとんどです。住民税は、1月1日に住所のある自治体に前年度の所得に応じた金額を納める必要があります。
たとえば、2024年の4月に海外赴任に行きその年の12月に帰国した場合は、2025年の1月の時点で住民票のある自治体に住民税を納めなくてはなりません。また、2024年に徴収される住民税は、前年の2023年分の所得に基づいて計算されているため、海外に住んでいたとしても引き続き納税します。
なかには、海外赴任が1年未満でも、節税のために任意で住民票を除票する人もいるようです。確かに節税にはなりますが、自治体からのお知らせが届かなくなったり印鑑証明が利用できなかったりと、帰国時に不便になることもあります。短期間で帰国する場合、住民票を残しておいたほうが日本での暮らしにスムーズに戻りやすいでしょう。
1年以上の海外赴任になる場合、それまで居住していた市町村の役場に国外転出届を提出し、住民票を除票します。住民票を抜くと、来年度から住民税を支払う必要はありません。
なお、海外赴任をする年の住民票は前年度の所得に基づいて計算されているため、支払い義務があります。出国までに払い終わっていない分は、日本で支払われる最後の給与でまとめて納めるか、もしくは納付書での支払いに変更しましょう。
海外転出届は、役所の窓口や自治体のWebサイトからダウンロード可能です。マイナンバーカードや本人確認書類とともに、出国の14日前から当日までに自治体の住民課(市民課)窓口に提出しましょう。
海外転出届は郵送での提出も可能ですが、マイナンバーカードの手続きは窓口でしかできません。引き続きマイナンバーカードを持ち続けたい場合は、窓口で手続きを行いましょう。
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